カフェネット投句(五月)飛岡光枝選
時鳥の声にいつの間にか雨があがったことを知ったのだ。「旅人に」がいい。原句は「旅人に雨あがりをりほととぎす」。「をり」では先の鑑賞の意味にはならない。「灰汁桶の雫やみけりきりぎりす」(凡兆)と同じ「けり」の働き。
朝靄の晴れゆく山路花うつぎ 勇美
白い靄の中から現れる白い花うつぎ。靄が徐々に晴れてゆくような、ゆったりとしたリズムが心地よい。
【入選】
山寺や苔に滴る水涼し 弘道
原句のままでは形はしっかり出来ているが内容に新鮮味が乏しい。「山寺や我に滴る水涼し」など踏み込みたい。
ほととぎす山田を奔る水の音 隆子
ほととぎすの声と奔る水の鮮烈さ。ほととぎすは声の鳥、声に音が重なるとうるさいので「水の音」は工夫が必要。
ただいまと卯の花垣を零しゆく 涼子
「ただいま」だと「零しくる」では?
エプロンを大きく広げさくらんぼ 勇美
季語「さくらんぼ」が合ってはいるが効くまではいかない。より緊密に作っていきたい。
【投句より】
「川床でひときわ冴ゆる夏料理」
「夏料理」では漠然としていて伝わってこない。この句の場合は具体的な料理名が必要です。「ひときわ」→「ひときは」。